どうなる事かと思ったが…いつもより想いの強いお盆だったように感じた。
今年の五山は、火床の数を減らして文字を描く事はせず、絞り込んだ炎での点火となった。
この数年、台風や暴風雨で送り火の心配をしたことはあったが…まさか、こんな風に送るお盆が来るとは。
それでも点火を取りやめなかったのは、京都中の人の願いからだと思う。
『お精霊さんは、迷わんと帰れはるやろか…』
ぽそりと、母が呟いた。
京都では、おしょらいさん・おしょうらいさん
と呼ぶ、御先祖様。
鳥居の形をしていない送り火を、感染防止策の通りに、今年はマンションからお山を覗き込んで見送った。
数年前に母は、母の両親(私の祖父母)が鳥居形の端っこを、手を繋いでくぐっていかはるのが見えたと話していたことがあった。
夜空の向こうに浮かび上がりだした、オレンジの二つの点。手を合わせて静かに念じた。
確かに心もとない気もする慣れない風景…
そう思った瞬間、パシャパシャ・カシャカシャと、ご近所のあちこちからシャッター音が聞こえてきた!
うちと同じで、ベランダや玄関前から遠くお山を眺めたはる。
今年の送り火の意味をみんなが理解している。
今年だけの送り火を、色んな思いでシャッターを切った。